16.《主よ、憐れみ給え》

ScenePlayer:なし / Place:某所

シーン:《主よ、憐れみ給え》 / SP:なし / 場所:某所

GMこれは、ある男の愛しき者への告解。
「私はいつか、また、後悔するのかもしれない。」
「…君はふてくされるだろうけれど。君は後悔が、嫌いだから。君も、御瀬も、本当にそういうところはよく似ている。」
「私は…けれど、きっといつか、後悔すると思うよ。」
GM男が見つめているのは一葉の写真。色褪せ擦り切れた、幸せな日の一かけら。
GM穏やかに眠る子供を胸に抱き、微笑む一人の女性。その肩を抱く、今は見る影もなき鷹揚な笑みを浮かべる男。春の日差しはその家族を包み込み、そこに幸せを浮かび上がらせている。
「……それでも、私は決めた。」
「キリエ。どうか。」
「どうか、私に望みを見せてくれ。」
「今だけは、胸をはらせてくれ。」
GM冬の冷え冷えとした空気に、男の呟きは細く流れてゆく。
GM閉ざされた窓の向こう、天使の梯子がゆらゆらと揺れている。
「君が遺した記憶を、どうか……どうか、あの子に。」
「君がどれだけあの子を愛していたか。君がどれだけ、この世界を愛していたか。君がどれだけ、生を愛していたか。」
「舛川先生も仰っていたよ。君はとても、私には到底辿りつけないほど……、……。」
「……いいや。けれど、そしていつか、君にあの子が辿りつけるよう…、…エクソダスから、君を取り返せるよう、」
「導いてくれ……キリエ。」
GM男はそっと、写真をポケットへとしまう。代わりに取りだしたるは、親指の先ほどもない小さな鉱石。
「……行ってくるよ。君が遺したこの欠片を。」
「あの時の私の願いも、君の最期の言葉も、きっと、」
GM男は鉱石を握り締め、顔を上げる。つま先を扉へと向ける。
GMかつりと靴音が響く。
GM靴音はかつりかつりと響き、窓の外、天使の梯子がゆらゆらと揺れる。
GM(憐れみ給え。憐れみ給え。憐れみ給え。)
GM(シオンへ恵みがもたらされた如く、エルサレムの城壁が築き直された如く、)
GM(願わくば、慈しみにより、憐憫により、諸々の罪とがを許したまえ。)
GM(主よ、憐れみ給え。憐れみ給え。憐れみ給え。)