22.《主よ、人の望みの喜びよ》

ScenePlayer:早川桐哉 / Place:病院

シーン:《主よ、人の望みの喜びよ》 / SP:早川桐哉 / 場所:病院

GM病室の窓は開かれ、夏の風にカーテンが揺れている。
GMベッドサイドのテーブルには封を切られた手紙が置かれていたが、キミが扉を開けた時、部屋の主たるキミの父はその手紙を読んでいたはずだ。
GM――つまり、キミの父は一命をとりとめたわけだ。
GM未だベッドの住人ではあるものの、しばらくの入院ののち退院するとキミは主治医から聞かされた。
GMそういうわけで、キミはベッドサイドのパイプ椅子を視線で示されて座ったかもしれないし、窓辺に腰を預けたかもしれない。
GM窓下の中庭から子供らが夏の日差しにはしゃぐ声が病室に届く。
GM扉の向こうから、ストレッチャーを転がす看護師と医師の声が聞こえる。
GMどこかの病室で鳴ったナースコールの音。
GMそんな雑音だけが響いてくる病室の中で、キミたちはしばらく無言のままだったかもしれない。
早川民雄「……。」
桐哉窓辺の方かな。窓の外に一旦視線をやってから、しばらく黙ってた。
桐哉「……」「……誰から」手紙視線で示して
GM父はベッドサイドの手紙に手を伸ばす。かさりと幽かな音を立てて、彼はその手紙を開いた。
表書きの字は、キミも見たことがあるかもしれない。一式の字だ。

早川民雄「一式くんからだよ。置いて行ったようだがね。」
早川民雄「……。……桐哉。」
桐哉「ほーん……」「……なんだよ」
早川民雄「…………」
早川民雄「……いろいろと、面倒をかけたな。」
桐哉「……んだよ今更」「面倒かける前に言えっての」
早川民雄「……母さんの事、覚えてるか。」
桐哉「……あんま覚えてねーよ」「面影、っつーか」「なんとなく、くらいしか」
桐哉「写真も残ってねーしな?」首小さく傾けて
早川民雄「いずれ、話さなければと思っていた。一式くんが……御瀬が、タイミングを知らせてくれたな。」
早川民雄「母さんはお前が成長するのを、何より楽しみにしていたよ。」
早川民雄「お前も私が抱くと顔をくちゃくちゃにして泣くのに、母さんが抱くとすぐ泣き止んだんだった」
桐哉「一式さんが? ……ああ」<御瀬が
桐哉「…………ふーん」ちょっと窓の外にちらって視線やる
早川民雄「母さんは15年前の調査で死んだ……私が死なせた、という方が正しいかもしれない。」
桐哉「…………」視線を親父に戻して聞いてる
早川民雄「母さんは賢者の石に、適応しなかった。……オーヴァードでもなかったしな。」
早川民雄「意志を間違えたとは言わない。だが、結果として、お前から母さんを奪ったのも同然だ。」
桐哉「……っ、……なあ」「同じことしたのか、俺と?」
早川民雄「……ああ。」「オーヴァードとなれば、命だけは助かるかと思った。その結果が、……暴走だ。」
桐哉「命」「……それしかなかった、ってか」
早川民雄「……言い訳だ。」
桐哉「……」
早川民雄「桐哉。」
早川民雄「お前に埋め込んだ賢者の石は、母さんに埋め込んだ賢者の石の、破片だ。」
早川民雄「賢者の石は、元の持ち主の記憶を宿す可能性がある。……」「……お前にも、と思ったが」
桐哉「……あ?」「破片……ってどういうことだよ」「……」
早川民雄「母さんは、暴走して……」「倒されては、いない。」
桐哉「倒されて、ない?」「じゃあ今は」
早川民雄「……あの日の母さんによく似た女性が、エクソダスにいる。」
早川民雄「お前がいつか思い出すまで、と。」「そう思っていたのが、私の逃げだな。」
桐哉「……」「……会ったかも、しれねえ」
早川民雄「……会ったのか。」
早川民雄「そうか……。いずれ、そうなるとは、思っていた。」「支部長殿から聞いた時、ついに、と思ったよ。」
桐哉「多分」「……いや、今の話だと……母さん、なんだろうな」
早川民雄「……あの時、母さんを死なせるのが、正解だったのかもしれない。そう、何度も後悔したよ。」
桐哉「んなこと」「ねーと、思う」
早川民雄「そうか……。」「……面倒を、かけるな。」
桐哉「目の前で死ぬとこだったんだろ。したら、黙ってられねーだろ、親父だって」「……おう」
早川民雄「ああ……」「助けたかったんだ。……結果はこのざまだが。」
桐哉「……先のことなんか誰にもわかんねーだろ」「だから、まあ、」
桐哉「面倒かけられんのがわかってる分だけ、今はマシ、っつーか?」
早川民雄「……。……母さんは、賢者の石で動いている。」
早川民雄「恐らくだがな。……賢者の石のレネゲイド反応を低下させれば、きちんと眠らせてやれるかもしれない。」
早川民雄「そう考えている自分が、恐ろしくもあるよ。助けたいと思っているのにな。」
早川民雄「だが、……桐哉。」
桐哉「……眠らせる」口の中で転がすように呟いて「……?」
早川民雄「お前の思う通りにすればいい。私はお前の選択を肯定しよう。」
早川民雄「あの日御瀬が、そして今、お前が私を肯定してくれたようにね。」
早川民雄「母さんはエクソダスにいる。それがあの昔、お前を抱いていた母さんと全き同じ人物かとは確証はない。」
早川民雄「それでも、あの日の母さんであったことには代わりはない。お前を誰より愛していた母さんであることには。」
桐哉「……ずっりーな、そういうの」<肯定~
桐哉「ああ、やりたいようにやってやんよ」「親父の子だかんな、どうなるかしんねーぞ」
早川民雄「助けたいと思う。だが、眠らせてやりたい。」
早川民雄「……だが、母さんの子でもある。」
早川民雄「まあ……そうだな。」
早川民雄「その時は、せめて父親らしく、責任でもとるとしようか。」
GM彼はそんな軽口のような言葉を、疲れたように笑ませた口元に乗せた。
桐哉「……ああ」「託したんだかんな、その時までにくたばんなよな」
早川民雄「私は生きぎたないよ。あの日も、その後も、そして今日も生きているからな。」
GMその時、からりと扉が開く。看護士が顔をのぞかせ、キミを呼んだ。
入院生活に必要なものを説明するから、という。

桐哉「今日のは俺達のおかげじゃねーの」と、言ったところで看護士に頷くかな
GM腰を浮かせ、病室を出ようとしたキミの背に、父は口を開く。
早川民雄「桐哉。」
早川民雄「母さんは、綺麗な人だったぞ。」
桐哉振り返って「……知ってんよ」「少しだけどな」
GM父は小さく笑い、そうか、と呟く。
GMというところで〆ますが!
桐哉はい!
GMちゅーとこでシナリオ〆です! 延長スミマセン!!!
紫陽花おつかれさまでした!!
GMおつかれさまでした!!!
桐哉おつかれさまでした!!!
鶴賀谷お疲れ様でした!