0.《お別れにむけて》

ScenePlayer:なし / Place:-

GM──すべての記録を、記憶を統括する者を”神”と呼ぼう。
GMこれは一つの創世記。描き綴られる夢物語。
GMけれど夢を見る当人にとっては、それが夢だとは思いもしない。
GM目覚めた彼が蝶の夢を見ていたのか、蝶が彼の夢を見ているのか、判然としないように。
GM……
GMそこは荒野であった。
GM海は曇天の下でただひたすらに凪いでいる。
GM山は隆々とそびえ、冬枯れの巨木たちが静かにたたずんでいる。
GM街は消え失せ、ただの荒野がそこにあった。
GMその荒野の真ん中に一本の巨木がそびえていた。
GMただただ、見渡す限りの荒野であった。
GM……
GM不意に地面が隆起した。
GMそれは樹を中心とした波紋のように広がっていく。
GM隆起した地面は風に洗われていく。
GM波紋は海にいたり、そして山にいたり……
GM……
GMそこには、街があった。
GM人がいた。犬がいた。ねこがいた。鳥がいた。魚が海で跳ねた。季節外れのトンボが森の木々の間を抜けてとんだ。
GM誰かが笑い合っていた。誰かが怒鳴り声を上げた。誰かがため息をついた。そしてまた笑い声を上げた。
GMまるでそこは平穏な世界であった。
GM……
GMそこに彼女はいなかった。
GM誰も知らない。
GMあのとき死のうとした彼女のことを、誰も知らない。
GM誰も知らずに、幸せになっている。
GMただ、
GM……
GM(すべての記録を統括する者を神と呼ぼう。)