12.冷たい方程式
医学博士《ヘティ・テディ》:「私はいつだって傷だらけ。それは仕方ない。だって私はゴミ虫みたいな存在だし、私に食べられる食べ物はきっと私より価値があるもの」
少年:「それは全然、仕方ないことじゃないよ。キミに価値がないなんて嘘だ」
医学博士《ヘティ・テディ》:「みんな私をぶつの。蹴るの。ママは私にたばこの火を押しつけたわ。だからたばこは嫌い。熱いのも嫌い。」
青年:「なにも悪くないとは言わない。でも、そんな罰を受けるほどのことはしてないだろ」
医学博士《ヘティ・テディ》:「私は私が嫌い。でも、みんなのことも嫌い。だって私をいじめるから。でも、いじめられる価値があるのかなって、そう思うときもあるの」
フードの少年:「いじめられる価値なんて、そんなことないよ。ヘティはもっと自信を持ってよ!」
医学博士《ヘティ・テディ》:「自信? そんなもの持てないの。だって、私はいつだって、……」
フードの少女:「知ってるわ。ヘティはそう言ってるだけ。本当のことなんて見てない」
青年:「誰が悪いとか言える話じゃないのはわかってる。悪いのはみんなだとか言うつもりもない。でも、ポイントポイントで悪いやつが違うんだよ」
医学博士《ヘティ・テディ》:「私は……、……」
少年:「間違えないで。【君は悪くない】」
医学博士《ヘティ・テディ》:「……そう。そうなのね。」
医学博士《ヘティ・テディ》:「私の償いはきっと、永遠に届かない。」
医学博士《ヘティ・テディ》:「傷つけて、傷つけて、傷つけて、でも私の命じゃあがなえない。」
医学博士《ヘティ・テディ》:「死ねばいいのかなって思った。そうすればすべて償えるのかなって」
医学博士《ヘティ・テディ》:「でも、誰も受け入れてくれないんだわ」
医学博士《ヘティ・テディ》:「だって」
医学博士《ヘティ・テディ》:「私に価値なんてないもの。」
医学博士《ヘティ・テディ》:「……」
医学博士《ヘティ・テディ》:「お願い。誰か、」
医学博士《ヘティ・テディ》:「……誰か、助けて。」
医学博士《ヘティ・テディ》:「──……あは。あはは。あははははは」
医学博士《ヘティ・テディ》:「叶わないの」
医学博士《ヘティ・テディ》:「叶わないなんて、知ってるわ」
医学博士《ヘティ・テディ》:「だって」
医学博士《ヘティ・テディ》:「私に助ける価値も、見捨てる価値も、あがなわせる価値も、これっぽっちもないもの」
医学博士《ヘティ・テディ》:「だから、勝手を許して。《史上最悪の幸運》。《神出鬼没》。《お菓子の家》。わたしは、」
医学博士《ヘティ・テディ》:「あなたたちの望みの礎に、勝手になるから。」
医学博士《ヘティ・テディ》:「──……それが、わたしの」「きっと受け入れてもらえない、償いなのよ。」