9.息ができない

ScenePlayer:なし / Place:-

GMほろほろと、ほろほろと女は崩れていく。
GMこぼした涙の先から、指先から、彼女はゆっくりと砕けてゆく。
GMうつろな瞳は天井だけを見上げ、そして何も見ていない。
「……、……ああ」
GM小さく呟く。彼女の瞳に映るのは数多の管、そしてしたたり落ちるしずく。
GMどうして、と彼女は思う。
GMそれは夫への恨みではなく、己の定命を嘆くもの。
GMそういう人だと知っていた。
GM迷う弱い人と知っている。目の前の命に手を伸ばそうとして、つかめなかった手を嘆く人だと知っている。
GM彼に悪気なんて一度だってない。そんな人ではないと知っている。
GMけれど、結局最後の最後で手を離してしまうような、そんな弱くて、けれど曲がれないそんな人だと知っている。
GM選んだことを後悔などしていない。
GMそうだ。
GM彼女の生は、きっとまもなく終わる。
「……しあわせ でした」
GMそんな呟きが、かれに届くはずがない。
GMそして、彼女の生がまともに終わる、そんなわけも。