28.それでもキミが生きろというのなら
ScenePlayer:早川桐哉 / Place:長谷川宅
桐哉:増え……
桐哉:!!?
GM:どうしたの
桐哉:いやなんでもないです!
鶴賀谷:まだ増やしてないから(震え声
GM:――家にかけられた白と黒の幕。すすり泣きの声。喪服の人々。
GM:子供の泣き声。あちこちで囁かれる、思い出を語り嘆く小さな声。
GM:キミはその雑踏の中、佇んでいる。
GM:キミもまた喪服をまとい、けれど沈黙している。
GM:それはキミの隣に佇む向田も同じく。
GM:長谷川晃、享年12歳。彼はあの日、登校途中に居眠り運転のトラックにひかれ、ブロック塀と鉄の塊に挟まれて、死んだ。
GM:レネゲイドウィルスなど、ジャームなど、何一つ関係のない、ただの事故死。
桐哉:ああー、うん……
GM:キミたちはレネゲイドウィルスの存在を知っている。そのウィルスがもたらす非日常を知っている。その非日常の中にこそキミたちの戦場はあり、そこにキミたちは生きている。
GM:けれどそんな非日常の外、誰もが暮らしている、キミが平和だと信じている日常の中にも死と非日常は点在している。
GM:キミは彼女を非日常から遠ざけようとした。それはキミが彼女を平穏な世界に置こうとしたからだ。
けれど、そんな事と関係なく、厄災は誰にでも降り注ぐ。
GM:キミはレネゲイドウィルスの非日常を知り、そしてその非日常から日常を守ろうと奮起している。
GM:そんな努力をあざ笑うかのような、そんな死がそこには存在している。
GM:また一つ、悲鳴のような泣き声が聞こえた。
桐哉:本当に日常で起こった死なんだよなあ……
GM:――弔問客を見送った少年の姉が顔を上げ、キミたちに気づいて、少しひきつったような笑みを浮かべた。
長谷川叶:「早川。向田。」「……来て、くれたんだ。」
GM:キミたちの方にゆっくりと歩み寄るその足取りは、数日ろくに寝られていないような頼りなさを漂わせている。
桐哉:「……長谷川」言葉詰まっちゃうな
長谷川叶:「……あとで、線香、あげてやってくんね」
長谷川叶:「……。……なんでだろうなあ、あいつ死んだの」
桐哉:「……おう」
桐哉:「……、……なんつったらいいか、わかんねえけど……」「悔しい、よな」
長谷川叶:「……うん。」「行ってきますって、いつもの通りに出てったのにさ。」
長谷川叶:「体操着、忘れてさ。あたし、引き留めたんだよ」
長谷川叶:「ほんの5秒違ったら、助かってたかな」
長谷川叶:「……忘れ物くらい、いいじゃんな」
長谷川叶:「……なんで、あのとき引き留めたかなあ」
GM:徐々に俯いた彼女は、数珠を握り締めた自分の手を見下ろしている。
GM:その手が震えて、一拍、落ちた涙を掬い上げるように、彼女は拳で顔をこすった。
GM:……隣の向田の視線は、キミを見ている。
向田幸:意訳:おい彼氏慰めろ
桐哉:「……そんなん、わからねえ、だろ。……お前が、自分を責めることじゃねえよ」
向田幸:向田が来た理由:この彼氏ほっとくと慰め方が絶対不器用だから付き添うわ
桐哉:向田君正しすぎて正座せざるを得ない
長谷川叶:「……そう かなあ……」
長谷川叶:「……」「ううん、……ありがと」
長谷川叶:「……いつもは一緒に登校してたんだけど」
長谷川叶:「庇えたら、よかったのにね」「そしたら、あの子の怪我の半分こして、……二人で痛かったなーって笑えてたかもしんない」
長谷川叶:「……」
長谷川叶:「……わけわかんないよね。」
GM:俯いた彼女は肩を震わせたまま。
GM:――彼女の名を呼ぶ声が、した。父親だろうか。
GM:彼女は俯いたまま、キミたちに踵を返す。
桐哉:「……後悔は、しちまうよな。どうしても」
長谷川叶:「……、……あとで、お茶。出すから。飲んでって」
桐哉:「……長谷川、」ちょっと呼び止めよう
長谷川叶:「……後悔しても、しょうがないのにね。」「……」
GM:呼び止める声に、彼女は涙目をキミに向ける。すぐにその顔をぬぐって、赤い目でキミを見た。
桐哉:「……俺で聞ける話だったら、聞くから」
桐哉:「……、……後悔、重てえ時に、抱え込むよりは……いいんじゃねえかって」
長谷川叶:「……」
長谷川叶:「……、」
GM:その言葉に彼女はキミを見上げたまま、きゅうと眉を寄せた。
GM:まるで決壊したかのようにぼろぼろと涙があふれて、真っ赤な鼻をすすりあげる。
長谷川叶:「……、あり がと。」
GM:ずび、と鼻に流れ込んだ涙をすすりあげて、彼女はまた顔を拳で拭う。
GM:それ以上の泣き様を見せないかのように、彼女は急ぎ足で家へと入っていく。
桐哉:「……、ん」心配そうに見てたけど、後は背中見送るかな……
GM:走り去る彼女の背中が家に消えて、
GM:キミの腕を、向田が肘でつつく。
向田幸:「……頑張れよ。彼氏。」
向田幸:「……弟くんとさ、長谷川ちゃんが仲良くしてるの、見てるの好きだったんだよな。二回くらいだけど」
向田幸:「いい姉弟だなって思ってたし」
桐哉:「……、……なんだよそれ」続いた言葉に黙るけど
向田幸:「晃くんは、早川のこと、いやだったみたいだけど」
向田幸:「姉ちゃんの彼氏だもんな」
向田幸:「……そんだけ仲良い姉弟って、ずっと仲良くいてほしいもんだよね。幸せでさ。」
桐哉:「……俺も、そんなに、会ったことねーけど」「長谷川想いだったのは知ってる」
向田幸:「だよな。……ああいう幸せみたいなの、続いたらいいなって、いつも思うのにさ」
向田幸:「幸運の女神さまってのは、いつだって理不尽な暴力をふるって来るんだよね」
桐哉:「……、……ままなんねえ、よなあ」
向田幸:「まったくだよね」
向田幸:「……支えてやんなよ。」
向田幸:「オーヴァードだとか、そんなん関係なしに」「人間なんだからさ」
桐哉:「……ああ」
GM:アスファルトにゆっくりと沁み込むような読経の声。
GM:いつまでも続いている。
GM:というところで〆ます!
桐哉:ふぁい!!
GM:唐突に桐哉をぶん殴って終わりました
桐哉:後で向田君も問い詰めなきゃいかんな……
桐哉:肉体的にも精神的にもエンディングでぶん殴られる