5.そこに猫はいない
ScenePlayer:なし / Place:過去
GM:窓の向こうから響くのはクラクションの合唱。
ガラス越しにですら昼下がりの光は柔らかく、林立するビル群の風に踊る。
GM:そこはマンションの一室だった。殺風景な床には靴跡が残る。
GM:少し出窓のようになった桟に腰掛ける青年が、逆光の中、肩を竦めた。
《神出鬼没》:「A市、A市か。これも《特異点》ってことかね」
《史上最悪の幸運》:「もしそうでもそうじゃなくても、どっちでもいい。単なる偶然でもいい」
《史上最悪の幸運》:「大事なのは事実。そうだろ。……本当に?」
《史上最悪の幸運》:「……。……いやかなり信じられない」
《神出鬼没》:「それこそどっちでもいいよ。ただの雑談みたいなもんだし。てかそこ食いつくの」
《史上最悪の幸運》:「えっ」
《神出鬼没》:「え?」
《史上最悪の幸運》:「食いつくだろ。食いつくだろ? だって……ねえ?」
《史上最悪の幸運》:「好きな子の話だよ? 食いつかないとかないでしょ。なに? 《神出鬼没》ホモなの?」
《神出鬼没》:「なんでそうなるの???」
《史上最悪の幸運》:「あっ、アメリカだとゲイっていうんだっけ」
《神出鬼没》:「ウンそこは問題じゃない」
《神出鬼没》:「えっなに、これボケなの? ツッコミ待ちなの?」
《神出鬼没》:「好きな人がどうこうっていうなら性別関係なくない? ホモだろうと関係なくない?」
《史上最悪の幸運》:「えっホモなの。こっち来ないで」
《神出鬼没》:「ボケるのやめよう。話進まないし。あとホモじゃないです。ゲイでもないです」
《史上最悪の幸運》:「はい」
《史上最悪の幸運》:「……」
《史上最悪の幸運》:「なんの話だっけ」
《神出鬼没》:「信じられないって話だよ」
《史上最悪の幸運》:「あぁ、うん。そうだった。信じられない。普通に帰れよ」
《神出鬼没》:「こっちでまだ仕事があるんだよ。てか、知ってるだけで面識ないし。あっちも知らないでしょ」
《史上最悪の幸運》:「ないわー……好きな子放って仕事に邁進とかないわー……」
《神出鬼没》:「お前さんの好きな人がなんで僕の好きな人にすり替わってんの? バカなの? ボケなの?」
《神出鬼没》:「それとも単に罵倒したいだけなの?」
《史上最悪の幸運》:「最後かな」
《神出鬼没》:「おいこら」
《神出鬼没》:「んなアホな事言ってるから僕まで応援とかで呼ばれるんだろ。《医学博士》といい加減に仲直りしろよ」
《史上最悪の幸運》:「プリン食ったから許さない」
《神出鬼没》:「……」
《神出鬼没》:「二人に同時に突っ込まなきゃいけない僕の気持ちも分かってくんねえかなあ、コウちゃんもyouも……」
GM:柔らかな光の中でそんな雑談は続く。
GM:そんな過去の時間が未来に影響するなんて、誰も知らない。