17.見知らぬ夜と人々について

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 「泣きましたか?」
 「いいえ、泣くというより、……だめね、人間も、ああなっては、もう駄目ね」
 「それから十年、とすると、もう亡くなっているかも知れないね。………そうして僕がこのひとの友人だったら、やっぱり脳病院に連れて行きたくなったかも知れない」
 「あのひとのお父さんが悪いのですよ」
GM 何気なさそうに、そう言った。
 「私たちの知っている葉ちゃんは、とても素直で、よく気がきいて、あれでお酒さえ飲まなければ、いいえ、飲んでも、……神様みたいないい子でした」
GM……
GM彼はぱたりと、本を閉じた。
GM蛍の光、窓の雪がほの白く光る季節でもないから、彼は月明かりを頼りにそこに座っていた。
GM月明かりに背を向けて、手を置いた本を見下ろす。
GMその口元が笑んでいるのか、への字に曲げられているのか、それとも何らの表情も浮かべていないのか、逆光の中、定かではない。
《史上最悪の幸運》「何が悪いとは言わないのかもしれない。」
《史上最悪の幸運》「ただ一切は過ぎていく、そうかもしれない。幸も不幸も何もないのかもしれない。ただただ過ぎていって、その流れの中にいるはずなのに、終わったようで、取り残されているようで、まるでのど元にもったりとした冷たいものが滞っていて、」
《史上最悪の幸運》「何を恨めばいいんだろう? 父親……つまり、育ち? 環境? 世界? どうしようもない現実ってやつ?」
《史上最悪の幸運》「僕にはわからない。なんで僕がこんな天運を持っているのか……違うな、天運に見放されてるのかも。見放されてはいないか……嫌われているのかも。」
《史上最悪の幸運》「よほど日頃の行いが悪かったとか、そういうやつなのかな?」
《史上最悪の幸運》「それとも、ただ、どうしようもない、そういうこともあるんだって奴かな。エディ・エッタが言ってたみたいな。」
《史上最悪の幸運》「……トリック・アンド・トリートが言ってたみたいに。越えられる試練なのかな?」
《史上最悪の幸運》「……」
《史上最悪の幸運》「……どうしようもないのかな。僕は」
《史上最悪の幸運》「……でも、」
《史上最悪の幸運》「それでも、ぼくは」
《神出鬼没》「何ぶつくさ言ってるんだか知りたくないけど、とっとと飯食って寝ろ。あと本読むなら電気つけろ」
《史上最悪の幸運》「あ、うん、」
《史上最悪の幸運》「……自分は鍋食ってきたくせに……」