32.《Dream of Butterfly》

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GM女は暗い部屋の中、呪詛を吐く。
GM呪詛でしかない。
GMけれどそれを彼女は願いと思う。
GMけれどその願いを向けられたものにとっては、呪詛に他ならない。
GM幸せだった時。”彼”がいれば強くなれると信じていて、
GMそして”彼”がいればなにも怖くなくて、
GMけれど、彼女は気づいてしまった。
GM扉の向こう。取り付けられたガラス窓の向こう。
GM幼い子供がガラスを叩く。
GMあどけない紅葉のような手で。
GM女は構わず、目の前の男を見上げる。
GM男は無感情に女を見下ろす。
「お前はどこまでも、母なんだな。」
GM女はわずかに笑う。
「そうね。女としての私より、母としての私が勝ったの。」
「あなたの望みには、」
GM子供がガラスを叩く。
GM両親のいつもの喧嘩――ではないと察しているのかもしれない。
GMここからもう何年も出ていない母の名を呼んで、
GMけれどガラスは音すらも遮って。
「残念だよ。お前は最期まで、」
GM――鮮血。
GM女の上半身がゆっくりと倒れて行って。
GM最期に伸びた手は、ガラスにさえぎられて。
GMそれで、おわり。
GMひとつの《特異点》の、おわり。
GM最期の願いは。
GM間違いなく呪詛のように。
GM彼女に問おう、《特異点》の意味を。
GM彼女はきっとこう答える。
GM特異点《シンギュラリティ》、神の因子にあらず、呪いそのものだと。
GMきっとそれは、次の特異点《シンギュラリティ》も、また。